ふとん職人と音楽家に共通する思い

2014年4月24日

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丹羽お父さん

4月22日、東京・六本木のレストラン「CROSS TOKYO」で、トークイベント「ものづくりと技術の継承〜未来へ繋ぐ大切なこと〜」が開催され、約100人の参加者が詰めかけた。登壇したのは、昨年、現代の名工に選ばれた丹羽正行・丹羽ふとん店4代目と5代目に当たる丹羽拓也氏に加え、歌手、音楽家、プロデューサーの中西圭三氏。モノ作りと音楽の共演から、我々は何を学べるのか。
バブル期にヒット曲を発表しながらも、その後、デジタル化の波の中で粗製濫造されるポピュラー音楽に抵抗を感じ、一時は音楽活動を停止していた中西氏がまず登壇。デジタル技術に依存せず、優れた音楽職人たちと納得できる音楽作りを再開して生まれた楽曲「ぼよよん行進曲」(NHKの幼児教育向け番組やイベントで採用)や独自の音楽活動「ぼよよん共和国」を紹介。作り手と聞き手が健やかにつながる音楽の場作りを目指す手法と思いを語った。
丹羽親子は、わずか20分ほどの間で、座ぶとん作りを実演して披露した。卓越した職人の流れるように美しい作業と、その早さに多くの参加者が固唾を飲んだ。ふとん産業は安価な海外での大量生産品に押されながらも、丹羽ふとん店は、3年分の注文を抱えるほどの人気だ。本物を継承することで次世代に豊かなモノ作りと暮らしを残そうとする職人親子の存在に多くの共感と敬意が集まった。
今日の製品やサービスを大別すると、工業と工芸に分けられる。つまり、プロダクトとクラフトである。前者は大量生産・大量消費を前提にしたもので、今日の暮らしを効率的で便利にすることに貢献してきた。半面、昔ながらの道具を使う暮らしの技術は忘れ去られようとしている。後者は、伝統工芸が代表するように、優れた技術を持った職人が、使い手の暮らしを見つめながら作ったものを、使い手も作り手に感謝して日々の暮らしに役立ててきたものだ。
この60年あまり、日本の社会は工業化に傾き、作り手も使い手も工芸の領域をおろそかにしてきた。その結果、日本の伝統工芸の産地は疲弊し、暮らしも薄っぺらなものになってしまった。工業化は、暮らしの道具に限らない。食品や飲料、そして音楽などのクリエーションに至る領域でも加速している。丹羽親子のふとん作りでの取り組みと中西氏の音楽活動の共通点は、クラフトすなわち工芸の継承と創造である。モノ作りの領域を越えて、共鳴し合うふとん職人と音楽家の熱い思いに多くの参加者が感動し、共感した。