意と匠研究所

vol.2 沖縄県石垣島の情景をコンテンポラリーアートに

2019年6月20日

 日本からのレベラション出展者で、最初に紹介したいのが石垣焼窯元の金子晴彦氏だ。2013年の第1回レベラションに日本から唯一選出された金子氏は、以来ずっと出展し続けてきた“常連”である。彼の経験談には、日本の工芸事業者にとって参考になるファインクラフトのエッセンスが詰まっている。

 金子氏は、元々、レベラション出展より前に「フランスに夢や希望を託して」という理由から、同国の見本市「メゾン&オブジェ」に3回出展した経験を持つ。その際に同様に出展していたフランス人陶芸家らと親交を深め、彼らから様々なアドバイスを受けた。「フランスに何のつてもなく単身でやって来た私を、彼らは心底気にかけてくれた。フランスでモノを売るにはどうすればいいのかなどを示唆してくれた」と振り返る。そうした中で、彼らからレベラションへの出展申請を勧められたのだ。厳しい出展審査を通過したときには「作品を正当に評価してもらえたことが嬉しかった」と金子氏は言う。

 レベラションに出展して何を得られたかを尋ねると、金子氏は「自信」と即答。「メゾン&オブジェは器を売りに、レベラションはコンセプトを売りに行く場」と指摘する。金子氏は自身が暮らす沖縄県石垣島の情景を陶器で表現することを、通年のコンセプトとしている。しかしメゾン&オブジェに出展した際には、あくまで「器」としてしか作品が評価されなかった。「食器だけを発表していても市場や評価に限界がある。よりコンテンポラリーアートの方向に進まなければならないと感じた」と、その後、自らの方向性を探った。

 今回は「ブルーウェーブ そこにある記憶 Ⅳ」と題し、波をイメージした爽快なインスタレーションを展開。展示ブース2面の壁に陶器の薄い小片を立体的に貼り付け、コンテンポラリーアートの表現を明確に打ち出した。金子氏のファインクラフトは、コンテンポラリーアートへの挑戦として開花しようとしている。(杉江あこ)

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