意と匠研究所

vol.3 耀変玳玻天目茶碗が大英博物館収蔵品に

2019年6月30日

 前回に続き、今回も金子氏の体験談から、レベラションとファインクラフト市場の動向を見てみたい。「レベラションには世界中から美術館やギャラリー関係者がたくさん訪れるので、文化レベルが非常に高い場だと感じる。だから作品が売れたどうかよりも、作品をどう見てくれたかの方が気になる」と金子氏は話す。現に第1回レベラションに出品した耀変玳玻天目茶碗は、後に大英博物館に収蔵された。このことで金子氏と石垣焼窯元のブランド力が向上したことは間違いない。

 また、我々の取材中にも金子氏の下にフランスのギャラリーから連絡が入り、「モロッコ王国の国王が抹茶碗を購入した」という報告があった。さらに同ギャラリーから今年12月の「サロン・デ・ボザール(フランス国民美術協会が主催する約150年の歴史を持つサロン)」期間中に、金子氏の今年のレベラション作品を展示したいという依頼があったと言う。金子氏のファインクラフト市場開拓は進んでいるようだ。

 そんな金子氏に日本の工芸についてどう感じているかを聞くと、「日本は団体戦」と比喩する。「個々人がもっと個性を持って、自由であるべき。伝統工芸はあってもいいと思うが、世界の舞台では日本の新しい工芸が常に求められている。ただ単に伝統というだけでは通用しない。日本から世界へもっと積極的に発信しない限り、時代に取り残されてしまう」と危機感を募らせる。いま、日本でファインクラフト市場を見据え、最前線に立っているのは金子氏なのかもしれない。金子氏の挑戦とその成果から我々が学べるのは、次の2点である。第1にファインクラフトに挑み、アート市場から評価されることで、工芸事業者のブランド力向上が図られること。第2にそうした評価やレベラション来場者らとのネットワークを介して、アート市場の開拓が可能ということである。(杉江あこ)

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