意と匠研究所

vol.5 キルンワークで独特の表情を生み出す

2019年7月16日

 本報告のvol.2、vol.3で紹介した石垣焼窯元の金子晴彦氏をはじめ、レベラションには幾人かの日本人作家が出展していた。実は金子氏のように日本から渡航して出展した作家は稀で、多くがフランスに在住する日本人作家だった。今回、紹介するガラス作家の前田恵里氏もその1人である。

 前田氏がレベラションに出展したのは2回目。ほかの作家と一緒に1ブースを3人でシェアする方法を採った。前田氏は東京ガラス工芸研究所で1年間学んだ後、ガラス工芸の技術をより深く学ぶため、欧州ガラス研究・研修センター(Cerfav) でさらに2年間の研修を受けた。 同センターでの研修中にガラス装飾部門のフランス国家職業適性証を取得。現在、クリスタルガラスで知られるフランスのロレーヌ地方ヴァンヌ・ル・シャテルを拠点に作家活動を行っている。

 前田氏が取り組むのは、ガラス工芸の中でもキルンワークである。日本ではガラス工芸というと吹きガラスが主流だが、欧州では電気炉で造形するキルンワークも多く見られる。今回の出品作品は「Extensions︎」「Extensions M」「Extensions E︎」の3シリーズ。いずれも鉱石のような形状をしていて、微妙なグラデーションが美しい色ガラスや、乳白色の線状模様が現れたガラスの表情が目を惹く。「自然の中で感じるエネルギーを表現した」と前田氏は話す。

 レベラションに出展する利点に、米国のクラフトやアート関係者、アラブ首長国連邦や欧州諸国の建築家、インテリアデザイナーらとコンタクトを直接取れる点があると言う。実際の作品購入者は欧州諸国のアートコレクター、建築家やインテリアデザイナーのほか、医師も案外多い。自身の作品を前田氏は「入口はクラフトだが、出口はアート」と説明した。工芸作家としての技術、そして表現力とオリジナリティーがあれば、こうしたアート市場への進出も可能なのである。(杉江あこ)

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