意と匠研究所

vol.9 フランスの田舎で触発された出来事をガラス作品に

2019年8月25日

 「人類は最初に何を作ったのか。私は“角(カド)”だと思っている。そんな文明の起源にインスピレーションを受けて製作した」と話す、吹きガラスアーティストの岡本暁史氏。その名も「文明」シリーズのガラス作品は、非常にエネルギッシュな魅力にあふれている。岡本氏は明星大学で吹きガラスを学び、神奈川県川崎市のグラススタジオで2年間働いた後、2003年にフランスに渡った。Cerfav(欧州ガラス研究・研修センター)を卒業後、2008年に妻とともに吹きガラス工房「J-verre」を設立。妻が日常的なガラス器やアクセサリーなどを製作する一方で、岡本氏はガラス作品づくりに専念する。

 2010年より、ブドウ畑が一面に広がるフランス中部ロワール地方のルイイに工房を移転させた。その理由は「田舎に身を置く方が、フランスの風土を一層深く知れるから」。ガラスを吹いては金銀箔や色粉を何重にも巻き付ける高度な技術を駆使し、そこに個人的な感情を映し出すことで、作品へと昇華させる。モチーフとするのは、日々、自身が感動したことや触発されたことだ。こうして出来上がった作品を「アートと捉えるかクラフトと思うかは、見る者が決めること」と岡本氏は割り切る。

 吹きガラスアーティストとして活動を始めて以来、岡本氏は欧州のさまざまなサロン(展示会)に出展してきた。今回、知人から誘いを受け、初めてレベラションに出展。「レベラションは一番レベルの高いサロンだと評判を聞いていた」と言う。個人コレクターを対象に、1作品につき250〜7000ユーロで展示し、買い手も付いた。

 さらに岡本氏から興味深い話を聞いた。フランス人の多くはアートを日常生活の中に設える習慣がある。対して「用の美」というように、日本人はどうしても工芸品に用途を求めがちだが、フランス人からすればアートも心を潤すなどの役割を果たす「用途の1つ」になるのだと言う。フランスでアート市場が成り立つ根本的理由がそこにあるようだ。(杉江あこ)

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