意と匠研究所

vol.11 美とは何か? 美の用を考えよう!

2019年9月9日

 レベラション2019報告を通じて、意と匠研究所はファインクラフトとは何かを考え続けた。連載当初では、「工芸事業者によるアート(芸術)運動」と位置付けたが、ここに至って、「工芸事業者による美術運動」と位置付けたい。

それは、現代アートが必ずしも美を必要とせず、思想や哲学を求めるのに対して、ファインクラフトはあくまで美を求めるべきという結論に至ったからだ。工芸事業者が素材に向き合い、その可能性を最大限に引き出し、新たな美を人類に提供することがファインクラフトの使命なのである。

 ここで言う美とは工芸の「用の美」でもなければ、工業の「機能美」でもない。美しいものは、暮らしの道具でなくても、日々使うことがなくても、人生に欠かせない大切なもので、その意味で十分に用を成している。つまりファインクラフトは既存の工芸や工業と全く異なる「美の用」を備えることによって、工芸の新たな可能性を未来に示すのである。
 では、美とは何か? 美は何のためにあるべきか? 美によって、人々は何を得るのか? これらの問いに対して、美は、強い自己肯定を呼び起こすものと答えたい。人は美しいものに出合ったとき、自己を強く肯定する。「生きていてよかった」「生まれてきてよかった」「この感情を誰かと分かち合いたい」。ここに美の用の発露が見て取れる。

 美には、強い自己肯定を促す力がある。ファインクラフトを追求することは、素材に潜む真の価値を見つけて顕在化させ、美の用を引き起こすことだ。ファインクラフト運動において、美とは何か? と言う問いから逃れることは許されない。新たな美を追求する旅に終わりはないのである。(下川一哉)

意と匠研究所

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