意と匠研究所

似てる?ミラノサローネと有田陶器市

2014年5月2日

ミラノサローネが終わると、有田陶器市だ―。そんな風に思う者は、私だけだろうか? 実は、2つのイベントの共通点についても、思うところがある。

ミラノサローネは60年以上続く、世界最大級の家具の国際見本市。イタリアをはじめ、世界中の家具メーカー、バイヤー、デザイナーが集う。一方の有田陶器市は、110年を超える歴史を持ち、期間中に100万人以上が訪れるおそらく世界最大規模の陶磁器の販売フェア。有田町と周辺の窯元、商社が軒を連ね、買い付け客が押し寄せる。普段の小売価格の半値ということも珍しくなく、陶磁器ファンばかりか飲食店やホテル、旅館の経営者も買い付けに訪れる。家具と陶磁器という違い、見本市と販売フェアという違いはあるが、構造的に似ている点も少なくない。

最も似ていると思うのは、イベントの多様性と複雑性だ。ミラノサローネを取材して最も不安なのは、イベント全体を見尽くせないことだ。イベントの規模が大きく、出展するメーカーの数も数千に上る。デザインのテーストやレベルも様々だ。人気デザイナーは数社から新製品を発表するので、とらえどころがない。一生懸命に取材しても、それは記者個人の興味と関心をベースにしたイベントの一部でしかない。「どこが面白かった?」と聞かれても、自信を持って答えられない面がある。

有田陶器市も、訪れる目的によって、見え方が異なる。したがって、評価も違ってくる。リュックを背負って初日に買い付けにきた陶磁器マニアなら、お目当ての作品や製品を手に入れられたかどうかが評価のすべてだ。店で客に出す食器を買い付けに来た飲食店のオーナーなら、とにかく安く買うことに注力する。デザイナーなら、窯元の経営者と出会え、職人とモノ作りの話で共感できればハッピーだ。また、3人いる人間国宝にも会える。話しかければ、気さくに対応してくれるからうれしい。

しかし、これが、モノを介して人々が集まるイベントの本質―多面性なのだろう。とりあえず行ってみる、では収穫は少ない。事前の準備と事後のフォロー、何より目的を明確にして限られた時間を現場で使い切ること。これ以外に道はない。有田陶器市は5月5日まで開催される。(下川一哉)

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